換骨奪胎

他人の詩や文章の一部だけを取り替え、主旨を借りて自分が作ったように見せること、また他人の作の焼き直しを換骨奪胎(かんこつだったい)という。まあ、平たく言えば盗作である。
私にも古い友人がいた。彼とは小学校から大学まで同じ学校に通った仲で、大学では同じ寮に住んでいたものである。大そう優秀な男で、大学では鎌倉仏教の研究をしていた。腎臓を患っていたからかどうか、卒業して故郷に帰り、人工透析をしながら養護学校の教師をしていた。
私が郡上に引っ越してから殆ど会うこともなかったが、故郷に帰った時に何度か彼の家に行ったように思う。そのような時の話しで、彼に星野富弘という人を教えてもらっていた。
その後、残念ながら、友人は壮絶に夭折してしまった。彼の奥さんに形見として何か貰ってほしいと言われ、なんとなく星野さんの『鈴の鳴る道』という詩画集を頂いていたのである。
それからほぼ二十年たった昨日のこと。喫茶店で偶然これを見つけ、久しぶりに手にした。その中で、次のような詩が目に入ってきた。

なにもしたくない 誰にも会いたくない しゃべりたくもない
野に咲く花のように 静かに一人でいたい
しかし腹が減った 残念だが 腹がへってしまった

若者の詩だが、私の琴線に触れてしまったのである。ただ、このままでは私の気分を表すというわけにはいかないので、なんだか照れくさいが、詩みたいなものを作ってみた。

じっと考えていたい 誰にも会いたくない しゃべりたくもない
枯れた木のように 静かに一人でいたい
しかし腹が減った 残念だが 腹がへってしまった

以上である。星野さん、つまらないものをつくって御免なさい。

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