自転車のパンク
街中の道に、観光用とかで中途半端に石を敷き、あちこちで凸凹がある。この間、仕事に出かけようとしたら自転車がパンクしていた。どうも最近パンクが多いような気もする。
いつもとは違う店で直してもらった。安物でそんなに執着心はないとしても、通勤に使うので必需品であることに間違いない。
店に着いてみると、さっそくちょっと高めの台に載せ、いろいろ点検された。タイヤにひびが入って割れかけているが、なんとか暫くはいけるとのこと。チューブを水につけて慎重に穴を見つけ、他にもないか丹念に確かめる。幸い一箇所だったが、前に破れて修理した所が又やられていた。その上からまた貼るわけにいかないので、削ってもとの面を慎重に出し、修理用のゴムを貼った後タイヤの中に入れた。「ムシ」を取替え、空気を適度に入れる。
話はこれで終らない。彼はペダルを回して音を聞き、チェーンが緩んでいることを見つけた。見てみると、確かに緩んでいるだけではなく、相当さびている。油を差しながら、適度に締めてくれたことは言うまでもない。私はこれらの流れるような作業を感心して眺めていた。
ハンドルなどが全体として正常な状態であるかを見定め、さらに彼が何かを言おうとした時である。私は仕事の時間が迫ってきたのでこれを遮り、丁寧な仕事を褒め、感謝して費用を尋ねた。
彼はパンクの手間賃と「ムシ」の値段をあわせて請求しただけである。当然といえば当然だが、彼の職人気質がおおいに気に入り、今後この店に頼もうと決めたのである。
ただ修理中、私が自転車をどれほど理解していないかを微に入り、細に入り説明するのですっかり恐縮してしまった。これからはもう少し配慮して乗ろうと思ったのは彼のおかげである。
彼は二十数年前のいわゆる教え子である。彼が頼もしい職人に育ったのが嬉しかったし、なんとなく誇らしく思えた。今の自分を考えると、こんなことを書くことすら気恥ずかしい。
その後、毎日気分よく自転車で通勤しているのは勿論である。