猿すべり

最近書いた「朝三暮四」というコラムの中で、私はどうしても猿の側に立ってしまうと言った。私なりに猿が「朝三暮四」で怒り、「朝四暮三」で大喜びした点を考えてみたい。自分の愚かさをさらけ出すようで、何回か躊躇したが、こんなことを恥ずかしがる歳でもない。今回は、好きなものを先に食べるか、後で食べるかという視点ではなく、「四」と「三」に拘って「多さ」ないし「大きさ」を考えてみる。あくまで遊びであり、楽しんでいただければありがたい。
さっそくテーマ入る。四は三より個数が多いとも言えるし、単に数として大きいとも言える。これをどういう表すかであるが、仮に「4>3」と「4≧3」を考えてみる。この二つの関係は、
(1) 4>3ならば4≧3である。真。
(2) 4≧3ならば4>3である。偽。
これらすらうっかり間違えそうであるが、(1)は4>3が4≧3の部分集合であるから真である。(2)は等号が忘れられているので偽。これから、4>3は4≧3であるための十分条件であるが、必要条件ではないと考えてみた。
だが、突然「>」「≧」という記号について煮詰まってしまう。4≧3についてである。例えば(2)に関して、反例は4=3だが、何だか腑に落ちない。任意の定数を示す文字を使って「a>b」「a≧b」なら問題はないとしても、実際のところ4=3になりえないから、4≧3には違和感がある。
そこで、「>」を「より大きい」、「≧」を「より大きいか等しい」という意味に戻ってみる。「4>3」は「4は3より大きい」、「4≧3」は「4は3より大きいか3に等しい」ということになる。つまり「4≧3」は、4が「3より大きいか3に等しい範囲の数(3以上の数)」とすれば、4は3に等しくないとしても3より大きいから問題はない。
多少違和感があっても記号として「≧」が「以上」の意味で使えるとすれば、4>3なら4≧3であり、また左辺の4を中心にして例えば4>2とも言えるし4≧2とも言える。また右辺の3を中心にして、5>3とも5≧3とも言えそうだ。
但しこれらは不等式で得た解、例えばX>3を、X≧2やX≧1にできるという意味ではない。不等式は必要な条件を得て、範囲が解としてある程度特定できるものをいう。
これから「>」「≧」などの不等号は、単に両辺の二数の大小関係を示すだけではなく、これらの記号によって定義された両辺のうち例えば左辺が右辺の範囲に入る数であることを示しているとも考えられる。
つらつら考えるに、私の脳が通常の猿並みであることをよく示しているが、要するに大は小を兼ねると言いたいのである。私は数学の専門家でもなく、内容に不安がある。あるいは力およばず誤っているかもしれない。おそまつ。