常用漢字表
政府は新常用漢字について11月24日に閣議決定し、同月30日に告示した。ご存知の方も多いだろう。「俺(おれ)」「羨(うらや)む」など196字を追加し、5字を削除して、計2136字になったと云う。字形について言えば、『康煕字典』を典拠とするらしい。
今後も日本語が漢字かな混じり文を使い続けるとすれば、公文書やこれに準ずる新聞などで漢字を制限することもやむを得ないのかもしれない。大多数の人に、基本情報を伝達せねばならないからである。
しかし、十人いれば十通りの生き方があり、それぞれの背景も用語の好みも異なっている。従って、その範囲について誰でもが納得する基準を作るというのはまずあり得ない。そこで専門家などに諮問して、時代を勘案し、普遍性を加味するなどまあまあの基準を作ったわけだ。
「岡」「阜」「阪」「媛」「埼」など府県名を表す11文字を新たに加えたことについては、当該府県の方はほっとしているだろう。これで全ての都道府県名が平等に常用漢字へ入ることになった。こんなことは当たり前のことで、むしろ今までなぜ使われなかったのか不思議である。
「鬱」「麓」のような字画の多い字も、パソコンや携帯電話などで変換すれば簡単に出てくるし、割合使用頻度が高いので新たに採用したと云う。
「彙」「挨拶」なども、論文や暑中見舞いなど公式な文書には結構使うものの、相当練習をしないと書けないなかなか難しい語である。
私は、これらの基準に不満があるわけではない。ただ、これを政府が「公布」するという方法に違和感を覚える。政府が漢字以外の外来語を制限しているという話は聞かないから、なぜ漢字だけを対象にするのかよく分からない。まだ十分にはこなれていない英単語などを、抽象化された用語として、公の場で使うことには抵抗がないのだろうか。
これを機に「羨」の字形で遊んでみると、『康煕字典』『大漢和』では羊部なのに対し、『説文』では「よだれ」部に収録されている。また「盗」も、『説文』では「盜」の字形で載っている。私は「羨」「盜」などよだれ部の字が結構気に入っているので、今回「羨」が新常用漢字に採用されて妙な気分である。