我が家の花事情

ここのところ、何回か山の中を散策する機会があった。山は萌えから新緑に変わろうとする時期にあたり、道中あちこちに山吹が咲いていた。数日雨が降らなかったからか、渓流が澄んで、自分のあくが取れていくような気分がした。
我が家で何気なく小さな庭を見ると、けっこう色んな花が咲いている。一年でこの時期がもっとも華やかかもしれない。
まずはチューリップから。なぜ毎年チューリップが咲くのかよく分からない。十何年か前に、再度この家へ引っ越したときからあったように思う。わざわざ球根を取り出して保管などしないし、土の入れ替えや肥料などもまったくやらないから、野生化していると言ってよいのではないか。
今年は黄色が三本ばかり、黄色と赤が混じっているのが一輪、白が一輪の合計五本ばかり咲いている。残念ながら葉はしっかりしていても、茎が細いので、倒れやすいように思う。
かつてこの時期かなりの忘れな草が咲いていたのに、私が引いてしまったのか、今はすっかり絶えてしまった。
ドウダンは枝が柔らかくて折れにくいが、雪の重みで枝が広がりすぎ、心ならずも枝をかなり折ってしまった。白い花は一つ一つ見れば可憐なのに、全体を見ると騒々しいような気がしていた。まあ、今年の枝ぶりぐらいなら、葉っぱの薄みどりと白のバランスがよくて可愛いように思う。
ツツジとサツキは、蕾のつくのがやや遅かったものの、例年より色が良いかもしれない。
二三日前に、母の日ということで娘から根のついたカーネーションが送られてきたらしい。我が家は日当たりが悪いので、少しは午前中に日のあたる庭へ出している。赤というよりどちらかというと深紅で、かなりまとまって束になっており、印象に残る色である。
『花伝書』に確か役者には、若ければ若いなりに、年をとればとったなりの花があるというような内容の記述があった。が、今回私が花を思い浮かべたのは、私自身には華がないからのようだ。

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