制度(1)

様々な分野で使われる用語だ。さんざん使っていながら、はっきりした定義が思い浮かばない。広範な意味で使われており、普遍性のある定義は難しい。英語で言えば、<System><Institution>辺りだろうか。
コラムは論文ではないので、あまりに理屈っぽいのは使えない。読み手がずっと正面に据えなければ読めないものは重すぎる。書き手が勝手に重箱の隅をつついて、読む気が起きないのは言語道断である。誰でも気になるちょっとしたテーマを取り上げ、見慣れぬ断面を切るなどして視点を変えれば面白いものが書けるという意見がある。確かに一理ある。
だが私が書けば、面倒くさい定義から始めるし、冴えがない。ずいぶんもがいてみたけれど、どうやら性根は変わらない。
今回もまた妙なものを取り上げているかもしれない。鬱陶しいことを始めてしまったと言われそうだが、ここでもゴーイングマイウエイである。
さて、よく目にする制度からおさらいしてみよう。すこしばかり概観するだけで、ぞろぞろ出てくる。
今自分と緊張関係にあるのが年金制度だし、病気やけがをすれば医療制度、身を切られるのが税制である。孫の通うのが学校制度によるし、手紙を送ったりするのが郵便制度などなど。
また歴史学では専制君主制、律令制、封建制など、政治の分野だと議会制や共産制などが常用される。
このほか社会や経済などの分野でも、日常の生活を考えれば、隅々まで制度がいきわたっていると言えそうだ。
私ではこれらすべてを網羅し、批判に耐えうる定義をするのはとうてい無理だとしても、ここまで少しずつ考察を重ねてきた。ここでは覗き見をしてみるだけだから、若者なら参考にしてもらいたいし、同輩なら昔を思い出して一笑のほどを。
『書經』に「罔失法度」(卷第四 大禹謨)という用例がある。本邦においては中世における諸々の「法度(はっと)」類を思い出す人がいるかもしれない。これに対し今回は「制度」である。
そこで『説文』をみると「制」は、「制 裁也 从刀未」で、会意字となっている。「裁」は「裁 製衣也」、「製」は「製 裁也」だから、「裁」「製」はほぼ転注で、布を裁断し衣をつくる義である。これから、「制獄」「折獄」のように、「折」の意味を併せ持つようになった。また「制」には「刑をもって制す」(『書經』卷第十九 呂刑)の例がある。「刑」にも関連するようになったわけだ。「裁判」「制裁」などが思い浮かぶ。
何やかや、「制」で終わってしまった。「度」は次回にまわすとして、最後に制度には縛りの範囲によって大小があることを記しておく。

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