周回遅れ
一周や二周の遅れではない。棺桶に片足を入れて生きていても、腑に落ちないことがほどけていくのは嬉しいものだ。
難しいというわけではない。すっかり分かっている人も多かろう。私もまた、手順を踏めば、何とか理解できそうな気がしてきた。ところが長年血肉にならなかったことからすると高嶺の花だったわけで、実際には手が届いていなかった。
地球は自転しながら、太陽の周りを公転する。地球は地軸の周りを反時計回りに自転する。なぜ毎日太陽が東から昇って西に沈むのかは、この自転と公転によって説明できる。毎日という点は、地球が太陽の惑星であり、決まった時間で自転しながら公転しているから。なぜ東から昇るのかという点は、地球が反時計回りに回るので、太陽が逆の時計回りに回るように見える。ここまでなら若い時から分かっていた。
星々が北極星を中心に回っている写真を覚えておられるでしょうか。理科のどの教科書にも載っている。私が腑に落ちなかったのは、これが反時計回りに回るという点だった。いろいろ自分で考えてみても、説明してもらっても、結局は手の内に入らないままだった。
この間、寝る前にボールペンを何回も反時計に回してみた。そうするうちに、少しばかりほどけたような気がした。私は寝る前に本を読んだり、考え事をする。結局は睡魔に飲み込まれるので、大して邪魔にはならない。
反時計回りに回したのだから、上から見ると当然ながら反時計回りだが、下から見ると何と時計回りになっているではないか。
とすれば、地球の自転軸を延長すると北極星があるわけだから、星々がこれを中心に回ることは当然として、南の地球から北の方向を見ていることになるので、時計回りの逆に回る。つまり北極星を中心に反時計回りなるのではないか。
台風が北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに巻くことはコリオリの定理で説明できることを知っていた。
また風呂の栓やキッチンシンクに流れる水も、北半球では反時計回り、南半球は時計回りの渦になるという。何となく地球の自転に関連するだろうとは感じていたが、熱心には勉強してこなかったので、手ごたえのあるアイデアは生まれなかった。これらもボールペンの理屈で実感できそうである。
これらが正しいとすれば、数学のじゅず順列もまた届きそうだ。今まで、何通りかの理屈を考えたことはあるが、結局は腑に落ちないままだった。例えば数珠を上からみれば反時計回りでも、下から見れば時計回りになる。逆回りも見る方向によって全く同じ並びになるから、円順列で得られた数を2で割るというわけだ。愚かではあっても、人生はけっこう面白い。