再度カワセミ

私にとってカワセミは特別らしい。散歩の途中で見つけて釘づけになるし、河原の石に腰を下ろしている時でも動作を止めて目を凝らす。これまでカワセミの生態を細かに観察してきたわけではない。それでも見る回数が増えるにつれ、ぼんやりとシルエットが見えてきた。
川面を見下ろす木の枝に隠れるように身をひそめ、今にも飛び出そうとする動き。獲物を見つけて真一文字に突き刺さる様子。小魚をくわえ、もといた枝や石の上などに戻る見事さ。一連が流れるようで迷いがない。
数日前に見たものは、一風変わっていた。屋根に落ちている熟し柿を咥えていたのである。運よく今回私が見たのは三回だったが、恐らくはもっと来ていただろう。
ふと湧いてきた疑問がある。一つはカワセミが柿を食べること、一つは少しばかり太っているように見えたことなどである。
初めに目撃したときは、啄んだと思われる柿を口にして飛び去った。太っている印象を受けたのは、風が強かったので腹側の毛が立っていただけかもしれない。小魚が活発に動いているとは考えにくい。その時には柿以外の餌が頭に思いつかなかった。
おととい、やはり我が家の屋根に来ていているのを目にした。この時には前回と同一のカワセミなのか確認することが思いつかなかった。縄張りがあれば同一ということになるが、少しやせているようだったので、別だった印象をもっている。やはり柿の落ちている場所から何も咥えず視界から消えた。
昨日もやってきた。今回は結構な閒滞在していたので、あれこれ想像を巡らして観察することができた。
トンビなど大型の鳥の鳴き声に反応しているようだった。私が確認できたのはトンビと烏だった。このほかヒヨドリの鳴き声にも反応していたか。首がよく回る。
割り合いゆったりした動きだった。前回及び前々回と同一個体だったか考えてみたが、識別の方法が分からなかった。太っていたし、やはり柿を咥えて飛び去った。
全体としての姿、背中と腹の色、特徴のある嘴からしてカワセミだとは思うが、絶対ではない。今や私より詳しい孫がやはりカワセミだと判定していたので、心強く感じている。不安は次の二点。
夏と比べ背の靑と腹のオレンジが鮮やかでなかった。羽の生え変わりがあるのだろうか。またカワセミが小魚などではなく、柿の実を啄んで飛び去ったことも不安をかきたてる。鳥に詳しい人の意見を聞くべきだが、今回はやっつけで断定してしまった。
もしカワセミであれば、珍しく正月を過ぎても残っている柿を食べたのだから雑食らしいこと、冬場の羽色は夏に比べてややくすんでいたこと、冬場なのになのか冬場だからか分からぬが、太って見えたことが新知見である。

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