呼吸

空気と触れない日はない。生きているというのは、心臓が鼓動し続けるだけでなく、絶えず息をしているという意味がある。
私の理解で呼吸は、空気を鼻や口から肺まで取り込み、不用になったものを吐き出す。取り込まれた空気中の酸素が肺で血液に結びつく。鼻の中や喉は細い毛でおおわれ、ウィルスなどが肺に入るのを防ぐ。
心臓から肺動脈へ出てきた血液中の赤血球に、確か肺胞だったかが働いて、酸素を取り込む。それから肺静脈を通じて心臓に戻り、大動脈から体中へ酸素を供給する。
こういったわけで大動脈に流れる血液はフレッシュな赤になる。体中へ酸素を供給するにつれ段々赤黒くなっていく。恥ずかしながら私は、長年、肺動脈と肺静脈の役割を理解できないでいた。
今は厳寒期だ。毎日自転車で通勤しており、身が引き締まる。八幡は山間の町なので、まず雪あらしのようなことはない。それでも、風が強い日はある。ペダルをこぐ足に力が入る時も、空気がきれいなら、気分は悪くない。
中国では、冬場になると特に北京や上海などの大都市を中心に大気汚染がひどくなるようだ。有毒物質がすっかり大気に混ざり、容易に除けない。強い季節風が吹き飛ばした時だけきれいになるという。これでは問題が中国国内に留まらず、日本や韓国など近隣の国へ影響を与えていることになる。オリンピックや国際会議中だけ石炭の燃焼を減らして青空を取り戻せたという。
かつて日本でもひどい大気汚染があった。高度成長期に尼崎、川崎、四日市などの例が顕著である。こういった状況になると繊毛が機能せず、有害物質が取り除けなくなり菌が直接肺に入り込みやすくなる。子供や老人などを中心に、呼吸器系の病気にかかりやすくなるわけだ。いかなる国であれ、持続可能な経済成長を望む他ない。
十年程前だったか、寝ている間に無呼吸となり苦しくて起きるというようなことが何回もあった。危機感が出てきて対策を考えてみたけれども、妙案が出てくるはずもない。医者に相談すればよかったのに、それもしなかった。
ただ腹式呼吸と鼻呼吸には拘ってみた。そのおかげかどうか、無呼吸で起きるということが無くなった気がする。鼾もすっかり減ったらしい。
長期にわたって宇宙に滞在していた飛行士が筋力を失い、地上に戻った時に、数人に抱えられている図を何回か見たことがある。これからすると、地上では不断に空気の重さを受け止めるため、知らず知らずに全ての筋肉を鍛えているのかもしれない。
近ごろ、食べ物を中途半端に飲み込むと、ひどくせき込むことがある。歳を取るにつれ食べ物を飲み込む力が落ちて気管支を塞ぐということか。呼吸系についても筋力を鍛える必要がある。

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