「ら」の話

郡上のゆるキャラをご存じだろうか。「郡上良良(らら)ちゃん」と呼ばれ、モチーフは鮎である。昨日初めて出会った。長良川と和良川が鮎で知られているので名づけられたという。団扇を配っていた人によると、小駄良川もその中に入っているかもしれないとのこと。
下流が長良川と呼ばれるのは近世のことで、江戸時代の洪水で稲葉郡の長良村を流れるようになってからという説がある。郡上では地区名を使って、上之保川や中野川と呼ばれた経緯がある。確か『古事記』では美濃市辺りを藍川と呼ぶ例もあった。
源流まで遡って長良川となるのはごく近年と言ってよい。
残念ながら、「長良(ながら)」の語源は分からない。和良は平安時代初期まで遡れる地名だが、語源などはまだ殆んど分かっていない。小駄良も同じ。
すでに「宇留良」(2016/05/30)というテーマで、長い間取り組んできたのにまるで語義が解けない事情について触れてきた。まだ熟しているとは思えないが、中間報告という形で書いてみることにした。
以下は郡上の地名を中心に考えたもので、少しばかり軌跡をたどってみる。スペースがないので、今回は語尾が「ら」の用例を示すのみ。ご参考になりますやら。
1 小倉、野々倉、三庫はそれぞれ「を-ぐら」「のの-くら」「み-くら」で「倉」及び「庫」が訓読みされている。これと同様な読み方は深皿、勝皿などは「さら」、寺が「てら」などの用例がある。千虎(ち-とら)、根村(ね-むら)など印象に残る用例がある。
この他、「洞(ほら ぼら)」「原(はら ぱら)」「平(ひら たいら)」などは非常に用例が多い。
2 用語の一部なのか接尾辞なのか不明のもの。
和良(ワラ)、気良(ケラ)、吉良(キラ)などの二音節地名、宇留良(ウルラ)、須良良(スララ)、安久良(アクラ)、小駄良(コダラ)などが三音節名、神奈良(カンナラ)は四音節地名である。この他、宇多良(ウタラ)は姓、多々良(タタラ)は一応職とみておく。
本来ならこれらを一つ一つ説明するべきだが、余力も能力もない。
ただ、ここで「野良(のら)」が「野原(のはら)」から、「川原(かわら)」が「川原(かわはら)」からそれぞれ縮約された形と考えられるならば、少しは手がかりができる。
この流儀でいけば、小那比の「須良良」は「須良-原(はら)」ないし「須良-川原(かわら)」、「小駄良」は「小駄-原」ないし「小駄-川原」というような解になる。この用法なら、「宇留良」は「宇留-原」などの省略された形ということか。
和良、気良、奈良、そして三河の吉良など二音節地名は難解で、前二者が『古事記』の仮名であるし、奈良及び吉良もまた万葉仮名でこれらに劣らない。今のところ二音節語なのか、接尾語を含め二語へ分解できるのかすら案がない。

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