山林地主
どうやら郡上一円で停電だったようだ。この間の台風は雨の被害よりは風による杉桧の倒木がひどかったと思う。
だんだん事情が明らかになるにつれ、被害がはっきりしてきた。我が家は雨漏りがあったものの、幸い重大事にはならなかった。八幡の市街地は停電がなく、何とか台風をやり過ごしたものと即断していた。
ところが、寺坂のトンネルを出ると別世界。緩斜面や屋敷地近くの杉が倒れかけている。スクーターとは言え、それなりのスピードなので細かなところまでは見えない。道路も片付いていたので、那比までそれほど精神に乱れはなかった。そして喫茶店で「停電のため休業」の張り紙である。
段々飲み込めてきた。マスターの言うには、通ってきた亀尾島も停電だと言う。昼間だったので気が付かなかった。更に板取でも倒木がひどいという。後に、亀尾島上流部は倒木で林道が通れないほどだと聞いた。徒歩で目的地まで行っても、また倒木という具合らしい。
私にも段々情報が集まってくる。奥の子が登校できないので、地元の高校が休校。停電のみならず、交通路が絶たれたからだろう。
和良では幹線沿い一帯、明宝では気良がひどかったらしい。白鳥、高鷲は停電の期間が長かったことから、更に被害が多かったと推測している。こんなことでは病院など公的な機関にもあちこちで影響があったのではないか。
なぜこんなことになったのか。私が見た限り、倒木は殆ど杉である。聞くところでは、一部桧も倒れたらしい。落葉広葉樹は葉が飛ばされたり古い枝が折れていたものの、倒木は目にしなかった。
同じ倒れるにしても、山奥で人知れず倒れるのと集落の近くでは異なる。道路や電線を断ち切ってしまうので、社会生活に大きな影響を与える。しかも今回は郡上中至るところで被害を受けている。
これらを全て山林地主の責任に押し付けるつもりはない。杉桧の植林は国家政策であった。材木の価格が思うようにならない今、中小地主は間伐すらままならない人が多いのでなかろうか。しかし、よく考えてほしい。道路や電線は住民全てのインフラである。道路の間際まで植林して、ろくに手入れをしないのでは山林地主としての責任が果たせていない。学校が休校となり、病院が不自由になるとすれば、もう放っておくことは許されまい。かくのごとき惨禍を孫子の世代まで及ぼしてはいけない。
例えば道路際10メートルは地主の負担で順次間伐し、植林を制限するなど、ペナルティを含め法や条例で縛る他ないかもしれない。山地の所有権を制限する、古くて新しい山林改革である。