第四指

テーマの選び方はいろいろだが、私は主として「犬も歩けば棒にあたる」式が多い。
この間あるテレビ番組で、爪の生え際を十秒ほど押しもみすると血行がよくなり、冷えが緩和する。但し薬指は逆効果であるというようなことを言っていた。
これは交感神経が薬指に繋がり、これを除く他の四本は副交感神経が繋がっていることに関連すると云う。どこがどう関連するのか分からないけれども、これが確かなら、私にとっても大事な情報である。
我が家は寒い。冬場にキーボードをたたきながらパソコンを動かしているので、どうしても指先が冷たくなる。と言うようなわけで手袋をつけているが、キーに触れる指先はゴワゴワしたものは着けたくないので、指先が切れているものを使っている。温めながらなので、毎年冬場の作業が進みにくい原因になってきたように思う。
私は何かの折に、意識して指を順番に曲げたり伸ばしたりする癖がある。気合が入るとランダムに動かす。指をそれぞれ一本だけ開くにしても、薬指だけは単独で開くのが難しい。小指を同時に開かないよう抑えてやっと開ける。
何本か纏めて開いたり閉じたりするときにも、やはり「薬指」で苦労してきた。一本を飛ばして二本の指を開く時にも薬指が絡むと途端に難しくなる。若い時にギターの練習している時にも薬指が厄介だった。当時、誰にも相談せずにいたので、自分には才能がないと感じていた。
皆さんはどうでしょうか。私だけかと思っていたのだが、どうやらそうではなさそうだ。
この前『孟子』を読んでいると、「孟子曰 今有無名之指 屈而不信 非疾痛害事也」(卷第十一下 告子章句上)という文章に出くわした。「孟子が言うには、今無名の指が有り、曲がってうまく伸びないとする。別に痛くて仕事に支障があるわけでない」あたり。趙岐の注は「無名之指 手之第四指也 蓋以其餘指皆有名 無名指者 非手之用指也」である。「無名之指」は第四指とみてよく、あまり役に立たない指ということになっている。単なる譬喩としてならどの指でもよろしいが、敢えて薬指にしたのは何らかの必然性があったのではなかろうか。趙岐の注は、思うようにならない指なので少しばかりイラついているように読める。
第四指が交感神経に繋がっているという話が事実であれば、神経のオン、オフがある程度コントロールできることになるのかもしれない。
病気の根本原因は、一つにストレスによる自律神経の乱れにあるそうで、この自律神経のバランスを整えることで免疫力を高める事もできるそうな。
年々、冬を乗り切ることが難しくなっている。爪の生え際を両側からつまむだけならそんなに苦労はいらない。風邪をひきそうな時には薬指を、指が冷たい時には他の指をつまむという要領である。今冬はこれをやってみるか。

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