さざ波

私は海辺で育ったので、脳のどこかに繰り返しよせ来る波が隠れているように思う。たまに海へ出かけて波音を聞くと、一気に体全体を持っていかれるように感じてしまう。
数日前まで孫たちが帰省していた。同世代の爺婆たちはお盆に向けてこれから迎え入れる頃なので、やや早かったようだ。特別楽しいところがあるわけもなく、それほど踊りが好きでもないので、長逗留しても面白くなかろうに。今回は川遊びと花火をメインにしていたようだ。
朝から川へ出かける。このあたりの子供たちは、学校で禁止されているのかどうか、午前中に川で泳いでいる子は殆どいない。川でちらほら見かけた子は帰省中の子達で、こちらの子でなかったかもしれない。
今回は天候に恵まれていたし、水量もまずまずだった。上の子は泳ぎが達者なので物足りなかったかもしれない。
私は海で泳いできたので、川で泳ぐのは難しいと思う。海水なら体が浮きやすいし、浜辺で泳いでいるだけならそんなに流れが強くない。
ここら辺りは水が冷たいし、流れがきつい。思うような方向へなかなか進まない。川底はどこも岩だらけ、石だらけである。
水の多い時には、遡って泳ぐのが骨である。長良川本流と吉田川の出会いでは、本流の下へ吉田川の冷たい水が潜っている。なぜかよく分からないけれども、本流は川幅が広いので流れが緩くなり、温まりやすいのかもしれない。これに対し吉田川は殆どが急流で、温まる暇なく、冷たいまま出会うのだろうか。
川遊びに一日だけ付き合った。小駄良川の橋下で淵のあるところ。いつもの場所なので子供達にもなじみがあるようだ。水量はさほど出ていなかったが、朝の内に出かけたので水温は低めだった。両親がついているので安全面は心配していなかった。岩場から飛び込むのが面白いらしい。去年も飛び込んでいたが、私の記憶では岩場の一番高い所から飛んでいたように思うのに、今回はそこまで登らなかったように見えた。それ以後、てっぺんから飛んだかどうか確かめていない。
私は体が火照るので、川下で足をつけていた。去年は鬼ヤンマの巡航に釘付けとなり網を振るなどしたが、今年はおとなしく見守っていただけである。
一陣の風が吹いて、川面がさざ波になった。本当に細かい波が光を反射して、川底が揺れた。なぜか心の片隅に残った。
手や足がチクチク、シカシカするのでじっと眺めると、どうやら何か所もアブに刺されたらしい。こちらでは体が濡れていると刺されやすいという話がある。そう言えば、体が乾いている時に刺されることは少ないかな。
プールもよいが川遊びは格別である。自然相手だと、新鮮さを失わない。

前の記事

呼吸

次の記事

美濃