ピアノ

グーグルで検索すると「ピアノ」はすんなり出てくるが、「ピヤノ」はいちいちめんどくさい。だが「プレイヤー」はそのまま出てくるのに、「プレイアー」はそれでは検索できない。近頃私がよく聴く「カスバの女」という曲でも、歌い手によって「アルジェリア」「アルジェリヤ」があり一定しない。このように錯綜するのは、外来語の音を重視するか日本語音にするかにかかっている。

「ピアノ」は原音に近く、「ピヤノ」は日本語音に言い換えている。どちらを使うかは年代や個人によって違うので、どちらが正しいとか間違っているとかはない。「プレイヤー」の場合ははそのまま検索できるので、日本語音が通用していることになる。

これらは皆<ia>という音に関連する。例外もあるが、日本語では母音が連続するのを嫌う傾向にある。<i><a>共に母音なので、できれば回避したい。回避する方法は幾つかあり、この場合は<a>に<y>を加えて<ya>とし、「ヤ」と発音しているわけだ。つまり、「ピヤノ」「プレイヤー」「アルジェリヤ」が日本語読みということになる。

これらは和語でもあるようで、「幸せ」「嫌だ」が思い浮ぶ。前者は「しあわせ」「しやわせ」、後者は「いあだ」「いやだ」を両用するようである。どちらをお好みでしょうか。私は使ったことがないが、「いやだ」は更に「やだ」まで進化する。

実はこれらを逆に考えてみたいのだ。既に「カイチ」について書いてきたので、「ヤチ」がこれに関連するかどうかを確かめたい。

「嫌だ」の<iya>が「やだ」の<ya>になる例からすれば「いや地」の線も考えられる。また上の例からすると、「ヤ」は<i><a>に分けられる可能性もある。<i><wi>は「い」として「爲」「居」「圍」「否(いな)」などが当てられるだろうし、<a>は「あ」として「亞」「惡し」などが想定できる。

ここで指摘しておきたいのが、「ヤト」「ヤツ」と「ヤチ」は別ではないかという点である。関東の多くの地点で「ヤチ」は小字より大きな地域を指す場合がある。「ヤチ」の省略地名としての「ヤ(谷)」でもやはりやや規模の大きい湿地帯を指す点は同じだ。これに対し、「ヤト」「ヤツ」は丘陵地や台地上ないしその周辺に分布する小字地名であることが多い。とすれば、「ヤト」「ヤツ」と「ヤチ」の語源が別とも考えられる。

そこで「ヤチ」は「いや地」ないし「惡地」として、「池」ではなく「地」を指していると解せないか。これならば、近世まで開発が遅れた原因も分かるし、「ヤト」「ヤツ」と「ヤチ」が異なるという実感もストンと落ちる。

「ヤト」「ヤツ」が「カイト」「カイツ」と関連するという仮説に対し、「ヤチ」は「カイチ」と出所が異なると解してみたい。                                              髭じいさん

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