西ウレ峠

郡上から高山への行き帰りによく通ってきた峠だ。春は遅くまで雪が降るし、秋は秋で不意をついてちらついた話題が出たりする。車を運転する人なら気になる所である。かくして若い時から何度も耳にしてきたのに、「ウレ」について未だ闇の中である。

この間から寝る前に『郡上の小字』(仮称)という資料を眺めている。その中で気になる地名が石徹白(いとしろ)にあった。「河ウレ(カハウレ)山」という小字で、まだ踏査していないけれども、何だかもやもやする。或いは関連するのではないか。

私は前に板取の「川浦(カオレ)渓谷」について書いたことがある(『板取の地名と郡上』(下)、2017年6月26日付け)。その時は「カオレ」を「川の上流」「川折れ」の二説を考えてみた。郡上近辺でも馬瀬で「川上」を「カオレ」と読む例がある。これからすると、「河ウレ山」だから川の上流域に当たることは間違いなかろうし、「河ウレ」は「カオレ」に関連しないか。

「河辺(カハベ)」が「カベ」、「河原(カハハラ)」が「カハラ」になることから、「カハウレ」が「カウレ」になることは不自然でない。とすれば「カウレ」「カオレ」はほぼ同義で、類似の音ということになる。

さて、西ウレ峠から西水源山へ遊歩道がある。『斐太後風土記』(富田礼彦著、雄山閣)に「西水源山」とあり間違いなかろう。同二俣村の項に「川上川と西水源川とも、此村中にて落ちあひて流れぬ」とある。

「川上川」は「カオレ川」ないし「カウレ川」、「西水源川」は「西ウレ川」と呼んでいたのだろうか。とすれば「ウレ」に「上」又は「水源」という漢字を充てていることになる。飛騨に「高麗人参絶へたらば、飛騨の唐ノ川のウレに有るべし」という伝承があるらしい。ここで「ウレ」は川の上流、水源をさすと言われるので、読み方としてさほど無理はあるまい。

郡上では「カオレ」で、飛騨筋では「カウレ」と言うような分布があるのかもしれない。飛騨では「カウレ」が更に派生して「カ-ウレ」となり、「ウレ」が水源を意味するようになったと推定するわけだ。

そう言えば、石徹白の「河ウレ山」についても「河上山」とも「河水源山」とも解せる。北美濃地区でも飛騨の影響があったのだろうか。長滝寺の庄園が飛騨にもあったから、満更突飛な推測でもない。以上でよければ、郡上における「カオレ」の解にも影響がありそうだ。一部「川折れ」でよいとしても、「川上」の義が有力ということになりはしないか。

整理ができないうちに書いたので、内容が前後してごちゃごちゃしているかもしれない。生きている内にしかできないという思いがあるので、悪しからず。                                               髭じいさん

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