社良(しゃら)下

前回は「社良(シャラ)」と「皿(さら)」が異なると解釈してきた。鮭が関西方言で「シャケ」、東部方言で「サケ」だから「シャ」「サ」が通じるとも解せるが、地域の地名を両用するとは考えにくい。

今回は「社良(シャラ)」に焦点を当てようと思う。「シャラ」の音から「沙羅双樹」を思い浮かべる人が居るかも知れない。これも又考慮しなければなるまい。郡上では仏教に関連した字名がそれなりにある。小駄良の奥から戒仏(かいぶつ)、堂前(どうまえ)、薬師洞(やくしぼら)など。吉田川を遡って「比丘尼坂(びくにざか)、京塚(きょうつか)を挙げておく。

「沙羅」を「シャラ」「サラ」のどちらに読んできたのかも関連しそうだが、「サラ」だとすれば、ここでも「皿」「沙羅」が通用するという意見が出てきそうだ。

ほかの例を取り上げて、これが可能かどうか調べてみる段取りとなる。郡上の字地名では「シャ」音について「社」と表記する例しか見当たらない。

1 上社良(初音 かみしゃら)、上社良洞(初音 かみしゃらぼら)

2 中社良(初音 なかしゃら)

3 美社ヶ洞(小那比 みしゃがほら)

4 堂社ヶ平(中津屋 どうしゃがひら)

以上である。

「社良(シャラ)」はそれとして単独で使われている例がない。従って別の解釈も可能だろう。例えば「美社」「堂社」の例から、「上-社良」以外にも「上社-良」の読み方ができるのではないか。

同じ字を二分して白山神社を「上社」「中社」と呼ぶ地区あったような気がする。気良では気良川の左岸と右岸の地区にそれぞれ東白山神社と西白山神社がある。これもまあ東社と西社とでも言えそうだ。

「良」を単独で理解するのは難しいが、何せここは小駄良である。私はこれを「小平(こだひら)」の「ひ」が略されたものと解した。ハ行が省かれやすい傾向はこれにとどまらないので満更でもなかろう。郡上はマスコットとなっている「ららちゃん」からも分かるように、「ら」で終わる地名がまことに多い。省略されたと考えれば原形を復元できそうな候補も多い。

そこで例えば「上社良」を「上社-良」と解し、「良」は「平(ヒラ)」ないし「原(ハラ)」の「ヒ」ないし「ハ」の落ちた形などと考えられないか。

なぜこんな呼び方をするようになったのか実際には不明だが、私は八幡町旧市街地及び大字初音の原以南に白山神社がない事と関連する気がしている。                                              髭じいさん

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