一人暮らし

しばらく一人暮らしをすることになった。若者なら不安と期待を胸に異郷の地へ旅立つ季節だ。私は学生時代や海外赴任を除けば、それほど長く一人暮らしをしたことはない。生きて行くのも面倒なのに、家事全般をすべて自分でこなさなければならないとすると鬱陶しい。気持ちが整理できない内に、その時がどんどん近づいてくる。

一番に浮かんだのは洗濯だった。近頃買い物をすることが日常になっており、町はずれのドラッグストアにコインランドリーが併設されていることは知っている。洗濯機も随分使っていないし、今風の装置もよく分からない。いっそまとめてコインランドリーで洗えばよいかなどと考えていた。

だが、洗った後そのまま使えるのか結局干さねばならないのか分からない。後者なら、家の洗濯機で洗っても同じなので自分でやるか。というようなわけで、先週使い方をレクチャーしてもらった。学生時代に使っていたアナログ洗濯機とは結構違う。我が家の洗濯機は絞るまでやるが、乾燥機能はない。花粉症なので、外で干すかどうか未定である。

食事はそんなに心配していない。朝はパン食なので、牛乳やチーズなどを切らさずにしておけばそれでよいし、昼食はご飯さえ用意しておけば、総菜を買いおき出来るし、一品や二品ぐらいなら常備菜として煮物を作っておける。うまくいかなければ、コンビニでパンでも買えばよい。

ちょっと気になるのは夕食だ。仕事から帰ってきて自分で手の込んだ準備をする気にならない。酒を飲まなくなったので出歩くこともない。となると、食べる時間が遅いので開いている定食屋がない。まだまだ朝晩は結構冷え、温かいものを欲しくなる。寒い時、冷たいものを一人で食べるのは勘弁してほしい。温かい食べ物と言えばラーメンが思い浮かぶ。煮物をおかずにしてインスタントラーメンでも食うか。近頃ラーメンのスープを飲まないが、熱い麺を啜るのはよい。

これからは、こんなことが多くなりそうだ。終活を急がねばならない。自分も動けなくなることを恐れている。幸いと言うか、私には家族に残す遺産というものがない。これに関しては多少申し訳ない気もするが、これはこれで子供達は身軽だと思う。負の遺産なら、ない方がよい。残った者が私の事であたふた動き回ることが少ない程喜ばしい。私の人生ではいろいろ不義理をやらかしてきたので、多少気になる件がないとは言えないものの、目だった借金は無いように思う。

一人で考える時間ができるという意味もあるので、これを機にじっくり後先を思案してみようか。                                               髭じいさん

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