髪の毛が抜ける
題名からすれば、とうとうお前も禿げたかと考える向きが多いと思う。相当薄くなってきたのは確かだが、今回はさにあらず、抗がん剤を投与されて髪の毛が抜けたという話である。
碁を打っている仲間の一人が近ごろ顔を出さない。一ヶ月くらいご無沙汰だった。気にはなっても消息を確かめるまでの仲なのか微妙なところで、寂しい思いをしていた。彼の打ち方と言えば、まさに力碁。いつも取るか取られるかの激戦ばかりで、布石が終わるかどうかあたりから斬り合いが始まる。相当な負けず嫌いと見えて、同じような所で戦いが始まるのに、同じにならないのが碁の不思議。
そんなこんなで先週だったか、どうやら区切りがついたらしく、彼が顔を出したので見ると髪の毛が殆んど無くなっている。彼が自分の口から抗がん剤の副作用だと言っていたので、治療に時間がかかっていたことが判明した。病名は聞いていない。
暫く打っていないので弱くなったか尋ねてみると、勉強していたので強くなったかもしれないと言う。久しぶりに打ってみた。相変わらずの力碁で、最後まで大熱戦だった。碁の内容からして、それほど心配はないというのが正直な感想である。
もう一人は女性。聞く所によると、やはり抗がん剤を服用し、副作用で髪が抜けたらしい。看護師さんに頼んで丸坊主にしてもらったと云う。女性はいくら短いと言ってもそれなりの長さを保ってきただろうから、相当ショックだったに違いない。回復していけばその内生えてくるだろうから、それなりに楽しんでもらいたいと思う。
そして三人目は長く前立腺がんを患ってきた先輩である。これまで症状が行ったり来たりで病院通いをしていた。なんでもステージが上ったということで、とうとう抗がん剤で治療することになったと言う。近頃どういう訳か私が行かなくなったので、最新の事情は知らない。入院して抗がん剤を投与されるとなると、相当しんどいことになりそうだ。年寄りなので髪の毛のことは若い時ほど気になるまいが、どうなっているのかやはり気がかりである。
こうやって振り返ってみると、身近な人が闘病をしながら生きていることを実感せざるをえない。もはや我が身も例外とは思えない。それ程惜しい人生ではないが、やることが無い訳でもない。ゴールを見定めて少し急がないといけないかも知れない。 髭じいさん