あま噛み

飼い犬や猫に噛まれるというのは、飼い主の序列に関連するのだろうか。我が家に猫が居るようになって半年以上、そろそろ互いに個性が分かってきそうなものなのにまだまだ手探り状態だ。

捨て猫だったからか、甘えることが下手らしく、食べ物をねだる時にも爪を立てるのでかなり痛い目にあったことがある。その都度大袈裟に痛い振りをしてきたので、近頃はすっかりなくなった。これについては信頼関係が出来てきたように思う。

一ヶ月ほど前だったか、思い通りいかない事があったようで、左足の甲あたりを噛んできた。傷は小さかったけれども、結構深かったので感染症が気になった。傷口を消毒してテープを張っておいたらその内に気にならなくなった。というような事があったので、私としてはかなり警戒するようになっていた。彼女はストレスが顔に出るので結構分かりやすい。私が用心していることを知っているのかは不明である。

本日、彼女は何かしらイライラしているみたいで、何度も私の膝や腹に載ろうとする。普段なら思うようにさせておくのだが、私は囲碁の番組に気を取られていた。どうやら邪険に扱われたと感じたらしく、警告するかのうように何回か噛むポーズをしていた。それでも邪魔されたくなかったので、叱り口調でダメ出しをした。堪忍袋の緒がきれたのか、あま噛みをしてきた。前程傷が大きくないし、深くもなかったのでこれが彼女の妥協点だったのかもしれない。

私は彼女に餌を準備するわけでもないし、寝床を綺麗にしてやるわけでもない。ただちょっと砂トイレやその周りを綺麗にし、彼女の休み場を提供するのみである。彼女にとっての主人が誰なのか分からないが、どうも犬の場合と同じでない気がする。

彼女は周りにいる人に序列をつけているのか、ただ自分との距離を測っているにすぎないのか。私には猫や鳥のアレルギーがあるので、どうしても気を緩めることができない。ここのところ私の周りで大人しくしているだけでも抜けた毛がたくさん散らばっている。気になるので一本一本はがして綺麗にしても、彼女が来ればまたもとに戻る。目が痒くなったり、鼻水が出たりするので根気よく取るよりない。

私が一定の距離をとっている事は彼女も分かっていそうだ。猫かわいがりをしないので、彼女も私との距離を置こうとしているのかも知れない。私は彼女と肌のぬくもりを感じるような深い信頼関係を築こうとはしない。そんなことができるような気もしないし、する気もない。

私と彼女だけで留守番する時に、寂しがるような気がする。私に近づいてきても、どこか信頼関係に不安があるので、彼女の望む距離感が得られないとイラつくのかもしれない。どうやら私は人との関係でも同じようなスタンスをとっているような気がしてきた。                                             髭じいさん

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