地名と音

音が地名と関連すると言えば違和感を持たれる人がいるかも知れないが、これが結構深い所で繋がっている。これまで「鳴滝」「鳴瀬」などの用例を見てもらったことがある。今回はこれら以外の例も楽しんでいただき、耳の聞こえることがどれほど有難いかを実感して頂ければ本望である。

「ドドメキ」「トドメキ」と聞けば、「百々目鬼、百目鬼(ドウメキ)」を思い浮かべる人が多いかも知れない。「百目鬼」は言わずと知れた百目の妖怪である。ところが、美濃や飛騨で見られるのは「ドドメキ」「トドメキ」と片仮名の小字になったものばかりで、その語源がすでに忘れ去られている。

確かに「牛ヲ二」が地名として残っている所はあるにはあるが、私が知る限り妖怪を地名にする例が他にない。「ドドメキ」「トドメキ」はこの地方において結構目にする地名なので、「百目鬼」という妖怪が地名になるとは考えにくい。

さすれば、どう解釈するか。私は大きな滝で、水が落ちる音ではないかと考えている。数例確認しただけなので確信までは持てないけれども、水量が多ければ「ドドメキ」「トドメキ」と聞こえる気がする。

「トトメキ」「トドメキ」「ドドメキ」はどれも小字の実例だが、これらは落ちる音が水量の少ない方から多い方へ変わる様子を表しているのではないか。

川の流れも色々ある。「木ワリバシリ」「大ハシリ」の「ハシリ」は「走り水」の事とすれば、流れが速いことになるので、「鳴瀬(ナルセ))」が思い浮ぶ。

また流れが緩やかならば「長トロ」「トロ場」ということになって、音とすれば深い所で出る「鳴水(なるみ)」あたりになるかも知れない。

「常滑(とこなめ)」「とこなべ」を取り上げてみよう。ここで言う「とこ」は、恐らく「床(とこ)」のことで、川底を表しているだろう。「とこなべ」は例によってこの辺りでマ行がバ行へ変換され、「め」が「べ」に交替したと思われる。

川底が滑らかならば水量によるとしても、それほど音が出ない印象で、底で小石が流れるなら「ザレ」、川面で聴くなら「ササメキ」あたりだろうか。

「鳴神(ナルカミ)」はどうか。「鳴神」は恐らく雷鳴を指していよう。これが地名となるには、雷が頻繁に起こる所とか神様がおられるとか、或いは歴史に残るような印象深いことがあったということになるが、いずれにしても今では確認が難しい。

ただ「トドロキ」「ヒビキ」などの地名からすると、滝のみならず、更に規模の大きい雷鳴を表している可能性もある。

「カラス尾」は、目に見えるというよりは里から遠く離れた尾で夜にカラスが鳴いているのなら、多少気持ち悪い気がする。音が地名として採用されるのは、実際に聞こえるものだけではないかも知れない。                                               髭じいさん

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