ごうろ
余程の事がない限り、聞いたことのない人が多いだろう。飛騨にある小字地名で、その変化形と思われるものを含めてなかなか面白いので取り上げてみる。私が見てきた中では殆んどが仮名地名で、旧益田郡朝日村黒川だけが唯一「郷呂」と漢字表記されている。これだけでは見当もつかないが、皆さんどうだろう。謎解きとまではいかないにしても、その本義へ迫りたいものだ。まずは関連しそうな用例を見ていただく。
01 ごうろ 旧益田郡朝日村大広
02 郷呂 旧益田郡朝日村黒川
03 ごうろ 旧益田郡朝日村胡桃島に二例あり
04 ゴウロゲ谷 旧高山市山口村
05 こうろ南、こうさこ 旧益田郡朝日村万石
06 こうろさこ 旧益田郡朝日村寺附
07 こうろ平、大こうろ 旧益田郡朝日村浅井
08 ゴウラ 国府町糠塚、同宮地
09 ゴウラノ、ゴウラ平 神岡町伏方
10 中コウラ 国府町村山
通称地名ならもっとありそうだが、これぐらいで止めておく。リストについて少しばかり説明すると以下のようになる。
「ごうろ」は「石の多い土地」、「こうろ」は「小石のゴロゴロしているような所」と解せそうなので、両者はほぼ同義である。「ご」「こ」については、旧仮名遣いで濁音を使わないから、表記上の音転と考えられよう。
「ごう-ろ」「ごう-ら」については、簡単ではないが、「石ごら(いんごら)」「がうら」(高山市)などから、「ごうら」も又「石」に関連しそうである。音についても「麻生(あさふ)」が「あそう」、「菅生(すげふ、すがふ)」が「すごう」になるなど、あ段からお段へ音転することがあるので、この場合どちらが原形なのか不明だとしても、まあ同義語とみてよいのではあるまいか。
「ご-うら」「コ-ウラ」については旧仮名遣いによって語義不明になってしまったかもしれない。ただ「こうら」は出雲の方言ではあるが、山百合、こうらん花を指すことがある。
以上、一連の用語はどれも石の多い土地、石の多い谷あい、或いは山中の岩場などを指す語と思われ、音転や旧仮名遣いから関連語とみて列挙しておいた。
2の「郷呂」という漢字表記はその土地における解釈が入っているので軽視できないが、「呂」の意味が特定しにくいので、これだけでは意味が分からない。
以上、私は「ごうろ」が岩場ないし川を流れるうちに角の取れた石が堆積する場所というような解釈をしており、「ごろごろ」「ごろんごろん」などのオノマトペとも関連するのではないかと想像している。 髭じいさん
