ツインダックス

 「ツインダックス」とは今年3月に進水した双胴のヨットの名前である。長さは約4.5m、一人乗りで、なんと水中翼があって、風速数mで浮上するのだ。これを設計したのは元ヤマハ発動機のボートデザイナー、堀内浩太郎氏である。水中翼で浮上した時、船の抵抗は極端に少なくなって、計算では風速の2倍以上の速さで疾走することになっている。風より速く走ることなんて信じられないと思われるかもしれないが、ヨットの場合、斜め後ろからの風で帆走する時が最も速く、抵抗が極端に少ない氷上ヨットの場合、風速の6倍で疾走することもありうるという。「ツインダックス」は堀内さんの指導のもとに東京大学の学生の卒業研究として1998年にスタートし昨年は模型実験が成功し、今年実艇が完成した。堀内さんは現役時代からヨットやモーターボートだけでなく人力ボート、ソーラーボート、水上バイク、携帯型水車発電機などなど、試作と研究開発に関わってこられた。1925年生まれで、今年76歳になられる。堀内さんはオートバイ・トライアル競技が趣味で、「四十雀(しじゅうがら)トライアル」の現役チャンピオンでもある。今年の大会は筆者の近くのスキー場でおこなわれたので、直接お会いして少しの間お話を伺うことができた。「私の人生は遊びの連続です」と言って笑っておられた。堀内さんの著作に「あるボートデザイナーの軌跡」(舵社)がある。

前の記事

テロリズム

次の記事

原理主義