あずき餅

私は小豆とは因縁が深い。ここ十年だけ取り上げても、かつて私が畑で収穫した作物で最も印象に残っているのが小豆であるし、例えめでたくない時でも赤飯をよく食べてきた。饅頭や羊羹などの和菓子も大好物である。また正月明けには少なくとも二三度はぜんざいにして食べるのを恒例にしているし、私にとって、よくお世話になる特別の食べ物といってよいかもしれない。
この間、ある所から餅を頂いた。その家には腕利きがいるらしく、白餅のほか豆餅や黍餅などこの辺りで普通に見られる餅だけでなく、小豆餅や新作の栗餅などが混じっていた。
あずき餅は、言わば、あんころ餅を搗いて固くしたような作り方である。
栗餅の方は、念のため言っておくと、栗(くり)であって字の似ている粟(あわ)ではない。栗は煮てあった。恐らく、ある程度もち米を搗いてから栗を入れ、それからもう少し搗いたのだろう。栗の粒が幾らか残っているという風だった。私にとってはいずれも初物で、どうやって食べようかと結構楽しみにしていた。
私は餅を煮て食べるのが好きである。白や豆を見ると、雑煮が目に浮かぶほどだ。今年も元日の雑煮はうまかった。白と栃餅だったかな。三日にもまた雑煮にしてもらい、確か白と草餅を食べたように思う。
黍や栃餅は香ばしく焼いて、砂糖醤油や黄な粉をつけて食べるのがよいのではないか。焼き方はいろいろで、ものによっても、その時々の気分によっても変わる。
さて、七日を過ぎたころ、おやつとしてぜんざいを食べることになった。いつもなら白か草餅を入れて食べるのに、案なしに、あずき餅と栗餅を入れると言ってしまった。早く食べたかったからか、後先をよく考えていなかったらしい。
栗の方は、ぜんざいでも風味を失わず、しっかり自分を主張しているようで中々美味かった。
ところがあずき餅は、入れたはずなのに、その姿が見えない。おやっと思ったが、よく考えればそれもそのはずで、ぜんざいの中に入れてしまったのだから、あずき餅がただの白餅になってしまったのである。
頂いた方に申し訳ないと思いつつ、自分があまりに間抜けで、思わず笑ってしまった。今思えば、焼くべきだったと思う。そうすれば何もつけずにそのまま食べても、香ばしくて、きっとおいしかったに違いない。