尖閣諸島の国有化

頭が冷えるまで待つと、ここまで来てしまった。既に国家主席となった人物の気になる発言を取り上げる。もう少し温めておこうかとも考えたが、日中韓ともに政府が変わったことだし、区切りをつけることにした。
私は意識して異なる方へ視線を向けることが多い。健全な社会には様々な視点を持つ者が必要だからと言えば、格好つけすぎかもしれない。だが、中国の膨張主義に曝されつつある現状では、私もまた中国共産党の動向から目が離せない。
既に主席となった人物が副主席として訪米した際に、米国の国防長官に日本政府の尖閣諸島国有化について、「日本の一部政治勢力が(歴史問題を)反省せず、茶番を演出した」と批判したと云う。党、国家を挙げたキャンペーンの一環だろう。これに前後して、領海侵犯は日常化している。
民主党政権による同島の国有化については、ドタバタがあったとしても、混乱要因を減らす目的であればそれなりに理解はできる。加えて相手が領有に野心を隠さない国であり、長期展望に立てば、国有化は必然かもしれない。これらはあくまで日本の国内事情である。
建党から統一まで、中国共産党には様々な人物がいた。実際に政権を握るには、様々な価値観を持つ者たちが集結する必要があったからだろう。中国人民は共産主義に未来を託したわけだが、長い年月が過ぎ、すでに「革命」世代は去ってしまった。
一党独裁が続くと、自らの都合に合わせて歴史観を作り上げ、教育も思うままである。これでは、どうしても旧態依然とした価値観を信奉してしまい、制御する勢力が育ち難い。すぐれた能力を持つ者が大勢いても、似た者同士では、ちょっとした違いで指導者が決まってしまう。
日本では、誰がどんな政策を批判しようと自由である。中国共産党にしても日本の政策を論じ批判することに問題はない。領有権に野心を隠そうとしない現状でも、中国政府が日本としっかり議論することはむしろ健全な外交の部類に入る。だが指導者たる者が、選挙で選ばれた他国政府の国有化策を茶番であると公式の席で述べることは剣呑である。そもそも中国は共産党独裁の国であり、いわば中国全土が国有地だ。土地の国有化が共産主義の原点にある。他国の国有化を茶化せる国ではない。
自らの立ち位置を見失った発言は領有を急ぐあまりとしても、外交は互いに敬意を失ってはならない。背景にそれぞれ国民がいるからだ。
既に国際法上落ち着いた「歴史問題」が、領海を侵犯する口実にならない。中国は国連の常任理事国である。納得いかないのであれば、国際司法の場で争えばよい。
多民族国家でありながら漢民族主義を掲げ、汚染物質を含む食品や黄砂を輸出し、外国に悪さをする。あらゆる手段を使い、一直線に敵意をむき出しにする点は何ら北朝鮮と変わらない。
領土領海への小さな野心で、先人が育ててきた友好の歴史を見失ってはいけない。

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