消費税

古く下々の民は黒や青で表された。「黎民」「黎庶」「黎元」「黎首」「黔首(ケンシュ)」などは黒だし、「蒼頭」「蒼生」「蒼氓(ソウボウ)」「靑人草(あおひとくさ)」などは青である。
四月に入り消費税が5%から8%へ上がった。少しばかり時間がたつだけで、これが当たり前だったかのように感じてしまう。が、我が家のちっぽけな会計では、かなりの負担増である。
長い間賛否両論があった。財政再建の一環として採用された増税だし、上げるための条件を満たした上だから、しっかり受け止める他ないような気分になっている。
円ドルの為替レートが百円代前半で落ち着いて、原油をはじめ輸入物価が上がっているし、政府日銀がともに目指していたインフレを「達成」できそうな状況である。巨大な国家の負債をインフレで目減りさせようとしているのだろうか。
さて身の回りに目をやると、中部圏では浜岡原発の停止に関連するのかどうか、電気料金が少しずつ高くなっている。少ない年金などで暮らしている人も多いだろう。賢く倹約して、楽しくやりたいものだ。
実施間もないタイミングで、友人といつもの喫茶店へ行ってきた。贅沢だが、必要経費の中に入っている。それに近頃は面倒くさいので割り勘にしている。申し訳ないけれども、コーヒー一杯で長話をしてきた。ただその店は常連の長居を嫌わない方針という。
清算する段になって、レシートを見ると20円上がっている。やっと現実に追いついた気分になった。何回か買い物してきたが、内税だったので上がったことを一度も実感しなかったのだろう。この値上げ幅が適切なのかどうかまで考えが及ばない。
私は何週間か前にその店のチケットを買っていた。たずねると、何と追加料金なしに、そのまま使えるという。だが友人は持っておらず、値上げ分を含めて払うほかない。
このちょっとした違いで、二人の行く道が分かれることになった。同じコーヒーを、私は少しばかり安く飲めたことになる。正直なところ、気分がよかった。だが、これを運命論まで広げるつもりはない。
消費税が上がることを見越し、その店のシステムを知った上でチケットを買っていたのなら、「先賢の明」があると言えるだろう。そうではなくて、たまたま買っただけである。私にしてもチケットが切れた時点で、消費税を負担しなければならない。
いつも使っているコンビニでガムを買うと、なぜが10%の値上げになっていた。事情を確かめていないけれども、これを機に、中にはたちの悪い便乗値上げがあるかもしれない。まあ、世事に疎い私が注意を喚起するまでもないか。
とにかく、頭が黒から白になったのに、青息吐息である。