川の小魚

四苦八苦の最中なのに、このところ川へ行くことが多い。孫が、夏休みの課題として、吉田川で釣りをしてシラハエの雄雌の数を調べると言い出したからである。これが、波紋を広げている。
何回か彼と釣に出かけたが、結構数は釣れる。夏休みに入ってからは、主として川虫と魚肉ソーセージを餌にするようになった。私は、迂闊にも、ウグイとシラハエが釣れていたと勘違いをしていた。
これまで私はシラハエが、この辺りでいうクソンボとは違い、オイカワのことだとは知らなかった。シラハエとクソンボを混同していたことが判明する。どうやら後者はアブラハヤのことらしい。
体側に二本の黒っぽい縞の模様が走って、腹の方が婚姻色になっているのがウグイ、これより小さくて、一本黒っぽい線が走っているのをシラハエだと思い込んでいた。
夏休みに入ってからも、彼には図書館で魚図鑑などを調べておくように言っておいたのだが、釣り上げた魚についてどうも彼の言う名前と合わない。
そこで川のことに詳しい人に相談すると、彼の方が正しく、私がシラハエとアブラハヤを混同していることが判明したのである。
これですっかり自信を失い、ことあるたびに私も図鑑を眺めたり、サンプルで確かめたりするようになった。郡上は食品サンプルで知られており、ある所で川魚についても精巧な作品が展示されている。
釣り上げたものから言うと、アブラハヤ(クソンボ)はさほど大きさに違いがないにもかかわらず、縦に黒い線があるものとないものがいた。成長過程の違いなのか、「タカハヤ」との混生なのか。
ならば、これまで一匹もシラハエを釣っていないことになるではないか。なぜ彼がシラハエの雄雌に着目したのかは聞いていないが、繁殖時期を知っていたことからすれば、或いは婚姻色の出たオスをオイカワと呼ぶことを知っていて、これの出ないメスと区別しやすいと考えたのかもしれない。
ここに、シラハエとアブラハヤを混同している私が立ちはだかったわけだ。それにしても、前を向いて行かねばならない。私一人なら、いつものように愚かさを味わい尽くしてから反省を加えていけばよいが、夏休み中にそれ相当のシラハエを釣りあげねばならない。
彼が借りてきた図鑑によると、シラハエは瀬に多くいるらしい。そう言えば、われわれの竿は二尺にも満たないし、糸もそれ相応の短いものだった。これではシラハエが釣れないのも道理である。
今彼は一人で川へ行くことを禁止されており、私がお供することが多い。餌は川虫を使うとしても、瀬に届く長さの竿で、それなりの糸をつけた仕掛けを新たにつくるか、それとも今のままで糸を長くして釣場所を瀬にかえるだけにするか。

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