迷い鳥

あらかじめ断っておくが、我が家は田舎とは言え、建て込んだ街中の一軒家である。大きな柿の木が我が家の庭に立っている。庭はそんなに広くないので、枝が張って隣の領分へ伸びたり、葉っぱが用水に落ちるのが苦になっている。また熟した柿が落ちて誰かに当るのではないかなど、いろいろ心配がある。
それでも伐ってしまえないのは、家主への遠慮があるだけでなく、私が柿を好んで食べるからかもしれない。
なぜかこの辺りでは生り年らしく、我が家もまた大豊作である。渋柿の系統なので、熟してゼリー状にしたり、干して食べる。今年は上手く干せたようで、甘さがほどよく、香りが増して美味しい。柿については、このぐらいにしておく。
今回は、この柿を目指して小鳥が集まることに焦点を当てる。柿の木が一本あるおかげで、結構やってくる。私は鳥について書くと緊張する。生態のみならず、名前すらからっきし知らないからである。まあ、これがかえって新鮮かも知れない。
朝早くからさわやかに鳴いているのは雀やヤマガラ。目が覚めて、これらが最初に聞こえてくると気分がよい。これにヒヨドリが混じる。こいつは、けたたましくて、仕方がないなあという印象。
既に烏もご出勤らしく、遠くで鳴いている。ここのところ気づいたのだが、夕方にカアーカアーとゆったり鳴いているのと違い、朝早くはカアカアのようにややせわしく鳴いているような気がする。
昼間は、部屋にこもってキーを叩いているので、かそけき声は聞こえない。合間に、本流の上あたりで、トンビの甲高い声が聞こえるぐらい。
夕方になると、鷺や烏などが目立つ。ここら辺りでよく目にするのはアオサギで、散歩の途中、川中を見てドキッとすることがある。
そうそう、この間メジロのような小鳥が庭の片隅でもがいていた。理由は分からぬが、何かにぶつかってショックを受けていたようだった。落ち着けば飛び立てる気がしたので、草むらの中にそっと置いておいた。手に持った感覚では、雀より小さい感じだった。しばらくして覗いてみると、もう居なくなっていた。
メジロなら分かる。黄緑色の羽根で、目の周りが白くなっており、それなりに区別はつく。私はウグイス色が鮮やかな黄緑色なので、ウグイスと言えばこの色を連想していた。ところがウグイスは地味なやぶ色だそうで、さほど鮮やかではないという。
この迷い鳥は黄緑色だったが、メジロほど鮮やかな色ではないように見えた。それに目の回りに輪がなかったし、別種だったと思う。
昔、ウグイスモドキという鳥名を聞いたことがあるが、これにあたるのかどうか知らない。

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