心も温まる

どこかの温泉をキャンペーンするつもりはなく、率直な感想である。師走に入ってしまった。一年のたつのが早いのか遅いのか。今年も股関節が痛むだの、足の先がしびれるだの色々あった。近しい人が交通事故に遭うなど重大なこともあるにはあったが、幸い大事には至らず、まずまず無事に過ごすことができた。年末も心を引き締めていきたい。
秋が終わり、ここ数日特に冷える。家の中もすっかり冬支度。こたつの掛布団は新調したものと云う。今は二人だけだが、賑やかな時には我が家の新しいものは使い始めに汚されたり、傷ついたりすることが多かった。これがトラウマになっているのか、汚さないよう注意される。
数日前から、ストーブも焚いている。燃料は灯油で、湯が沸かせる旧式のタイプとファンヒーターを併用している。灯油の値段が高止まりし、気軽にストーブを点けるという気にならない。それでも火の近くにいると、何かしら体が緩むような気がする。
近ごろセントラルヒーティングにする家もあるそうだが、私の知り合いにはない。聴くと、
床暖だの電機毛布だの暖房用具もいろいろで、それぞれ環境に合わせて使い分けているらしい。この辺りまでが庶民と言ってよいかもしれない。
私は湯たんぽが好きなので、大量に湯がいる。古いタイプのストーブが欠かせない。
寒くなると自転車やバイクは覚悟をしないと乗る気にならない。風を切るのが気持ちいい時期はとっくに過ぎ、雪の便りもちらほらする。通勤で乗らないわけにいかないので重装備になる。
暖かそうな日差しのある日中ならまだしも、日が暮れてしまうとめっきり冷えてくる。外へ出ると途端に体をすぼめて硬くなる。勝てそうもない戦いを寒さに挑んでいるような気になる。
こうなると、いつも頭に浮かぶのがゆったり温泉に浸かる図である。家族も悪くはないが、私は四十年以上つきあっている朋友と共に出かけるのが好みである。下呂など有名なところへは行かない。近場の温泉で十分、定宿にしている隠れ家みたいな所へ行く。
近況をぼつぼつ話しながら、生きてきた時間を味わうように浸かるのがよい。一晩泊るのでたっぷり時間はある。珍しいものが無くても、彼らと一緒に晩飯を食べるのが旨い。滅多に飲まないビールを風呂上りに一杯、時間をかけてゆったり食事するのも我が家では中々ない。
壮年時代には一年ごとに出かけたが、なぜか近頃は少なくなってきた。懐具合によるのか、家庭の事情というやつか、だがもうそんなことを詮索しても仕方がなかろう。
まだ行くまでに時間があるのに、もう心が温まり始めている。

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