せんべいと紫陽花

煎餅といえばどんなものを思い浮かべるだろうか。これだけ歳をとると、結構いろいろなものを食べてきたように思う。なぜかすぐに浮かんだのは高山の白い大きい煎餅と、八百津のそれである。
高山のは塩せんべいと言ったかな。もう記憶が定かでないが、軽くさくさくというような感じで、噛むとすぐに溶けてしまう印象が残っている。材料など気を使っているだろうが、見た目は凝ったものでなく、薄く焦げ目がつくぐらいで素朴な味である。確か目の前で焼いているのを食べたことがある。何かの折に高山へ行くと買うことがある。
他方八百津は、ここら辺りでは煎餅の町として知られている。様々なものがあって一口に言えない。私はピーナッツなど豆の入ったものが好みである。
ちょっと風呂敷を広げすぎたかもしれない。数日前、私が通う駄菓子屋でいつもとは違うことが起こった。
なんでも煎餅の入った箱を落としてしまい、大方割れてしまったそうな。売り物にならないということで、中からましなものを集めて袋に詰め、常連さんに無料で配っていると言う。「ああ、俺も常連なのか」と少しばかり違和感があったが、有難く頂いた。
結構大きな煎餅で、直径十五センチばかりの円形をしており、食べてみると甘めの醤油をつけて焼いたようである。塩せんべいよりは少しばかり歯ごたえがあり、カリカリないしガリガリまでいかないとしても、サクサクよりは少し堅い。
袋に何も書いていなかったので、どこの業者が作ったのか分からない。私はこの辺りの職人が焼いたように感じている。孫が「これおいしい」と言っていたそうだ。
我が家の庭は小さい。今年は紫陽花の株が大きくなって、花が沢山咲いている。私はもともと紫陽花がそれほど好きでない。花が大きくて数も多いとなると自己主張が強すぎる。だが我が家のはガクアジサイという種類で、西洋紫陽花のように派手なものではない。
今年は春先から全く手入れできなかったのに、元株が大きくなるのに加え別株が成長しており、地味とは言え併せて数十の花がついている。
雨に濡れた紫陽花は梅雨の鬱陶しさを慰めてくれることがある。最初は薄紫だったものが、日当たりがよいからか、上の方は薄いピンクになっている。新しい株の方はまだ背が低く薄紫を保っている。
柘植も伸び放題だし、ドウダンツツジも元気が良すぎて他の灌木と勢力争いとしている。下草として茗荷やミツバが生えており、これまた元気が良すぎて洗濯の干し場まで侵略する勢いである。
煎餅にしても紫陽花にしても見慣れた何でもないものだが、今年は今年で初めて経験するような気になっている。

髭じいさん

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