長雨

郡上の徹夜踊りは例年通り行われたが、後半二日は台風の影響で中止になったようである。踊りスケベ達は、風雨が緩むや否や、出来るではないかと言っていたがね。

今回は台風の通り道からずれていたからか、風雨ともそれほどでなく有難かった。本貫地の明石に再上陸したらしいので、少しばかり気にはなっている。台風といえば、私の記憶に間違いが無ければ、生暖かい風にのって強弱入り混じった雨を思い起こす。少年期の室戸台風だったかで、今回とは時期に違いがあったのかもしれない。

その後晴れた日の夕立を含め、雨が続くという展開だった。先週は周初からずっと雨で、週末になってやっと晴れた。晴れたと言っても、夏らしいスカッと青空とはいかなかった。

この長雨でいろいろなタイプの雨が降ったので書く気になったが、一旦晴れてしまうと、どんな順番だったかはっきりしなくなってしまう。

これはあの世へ先に旅立った人達についても言える。あれほど情が通った仲であっても、目の前からいなくなってしまうと、記憶がだんだん薄れていく。町家でも同様で、実際に取り壊されてしまえば日々記憶がうすれ、旧態を呼び起こすのに時間が掛かったりする。よほど根気に通ったところなら、鮮明に残ることもあるが、徐々に断片に限られていく。

周初の雨は吉田川上流の明宝で大雨だったらしく、土色の水が大きな岩を隠していた。八幡でもかなり強く降り、我が家の心もとない屋根を激しくたたいていた。

多分その翌日あたりでなかったか、粛然たる雨がずっと降っていたように思う。音を立てて屋根をたたくほどでなく、絶えまなくただ美しく降っていた。

周央に降った雨は、降ったりやんだりするものだった。合間を縫って、那比の喫茶店までスクーターを走らせ二週間ぶりに訪ねることができた。ところが帰る間際に土砂降り、二三十分雨宿りさせてもらった。止んでからもう一軒相生の友人宅を訪れると、やっぱり土砂降り。繰り返し降るのに、それぞれ強烈だったので、違和感が残った。

昨日の雨も印象に残る。霧雨なら周りが暗く、細かな雨が降っている感じなのに、雲がそれほど厚くない。やや明るくて、非常に細かな雨が漂うように降っている。小ぬか雨というのかな。

雨なぞ、これまで数えきれないくらい見てきたはずなのに、近頃何となく気になる。落ちついてそれぞの雨を感じてこれなかったのは、自分の日常で精一杯だったからだろう。長雨と言うのは自転車通勤を続ける私には嬉しくないのだが、それはそれで面白味があるのだな。                                               髭じいさん

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