雪が融けたら

二三日前だったか、朝起きてみたら裏庭が白くなっていた。雪が降ると、それまで晴れて暖かだった日のことが頭から消えてしまい、冬の真っただ中に連れ戻されてしまった気分だ。翌日も一日中雪がちらつく始末で、春がすっかり遠のいてしまった感がある。遠くの山を見やれば、一面の雪景色、かなわんなあ。これを書いている間も、どんよりして今にも降り出さんばかり。それでも三月も中旬なのだから、晴れさえすれば、温かさが戻ってくるはずだ。

この間ある中学生が、「雪が融けたら何になるか」という質問をしてきた。これは裏があるなと直感したので、まずは用心した。頓智をあれこれ考えても思い浮ばなかった。やや間があって彼は素直に答えろと言う。私は「ウウ-ン、水かな」と応じる。皆さんならどう答えるだろうか。

尋ねてきた彼曰く、「水と答える人は理系だよ」。その時私は水の他に思い付かなかった。そこでその場にいたもう一人に同じ質問をすると、彼は「雪が融けたら春になるよ」と応える。なるほど、そうきたか。春はどうなのと聞くと、「春の場合は文系だよ」と言う。どうやらこの質問は彼の発案ではなさそうで、ある高校生に聞いてみると、内容を知っているということだった。子供たちの中では周知の話題なのかもしれない。

何かしら気に入った私はこの話をいい大人達に話してみると、彼らも面白がっていた。私と同じように「水」を答える人が多かったが、中には「春」を連想する人もいた。文系、理系の話をすると、あれこれ考える風で、遠くを見るような表情をする。

ただ根性のねじ曲がった年寄りとしては、文系、理系の真偽を確かめたくなる。理系と言われ、少々違和感があったので反論を考えてしまう。私は水と解答したが、雪解けの水が集まれば小川となり、フキノトウや福寿草など、野の花を開かせるではないか。更に小川を集めれば、冷たいながら水量の増した春らしい川となる。

それでも私に質問してくれたことが何となくじわっと嬉しかった。彼らも春が来るのを楽しみにしていることが分かるし、その気分を私と共有しようとしてくれているように感じた。

既に花粉症で目がかゆいし鼻水も出る。手ばなしに喜べる状態ではないが、彼らと共に春を待ちたいと思う。                                              髭じいさん

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