ウト洞
「ウト洞」は郡上市の隣にある旧清見村二本木の小字だ。この名では散見するのみで、それほど分布していないように見える。今回これを取り上げたのには、いくつか動機がある。一つは二年ほど前に触れた「ウトフ」という地名との関連であり、もう一つは九州の地名に取り組んでいる友人に触発されたこと、近ごろ「ウト」の語源に興味が出てきたこと等である。
「ウトフ」(2024年2月5日付け)では、これを「独活-生」と解した。今も私はこの仮説を維持している。というのは語尾に「フ」がつくのは、「アサフ(麻生)」「スガフ(菅生)」など植物名の後につくことが多く、「生」と解釈するのが自然に思えるからだ。
とすれば「ウト」は「ウド(独活)」ということになるが、前回はここで留まってしまい、その語源までは思い至らなかった。
九州に多くに見られる「宇土」をはじめ、「羽土」「宇都」「鵜戸」などと表記される「ウト」について話題に上がった時点でやっと「ウト」の語源に至り、迂闊なことである。
そこで調べて見ると、「ウト」は「空(ウツ)」の変化形という事になっていた。つまり「ウツ」から「ウト」へ主に母音が変化したことになる。意味としても「ウツ」が基になっているらしく、
1 空(から)であること、空っぽ
2 内部が空であること、中空。「うとう」と呼ばれることがある
3 洞穴。「うど」と濁音になることがある。
4 川岸のえぐれて窪んでいるところ。また「うど」と発音されることがある。
5 掘れ窪んだところ
これらの他、方言として谷や狭い谷を意味することがあり、両側の高く切れ込んだ道を言うこともあるそうだ。
いずれにしても、内部が空(から)であることを中心とした義だと纏められよう。
ただ、この辺りで中空を表すには「ウロ」を使うことが多い。これが単にこの辺りの方言で転音しただけなのか、意味に違いがあるのかは精査する必要があるかもしれない。
大きな岩屋や洞穴は、先祖を祭る神聖な場所になっていることが多い。このあたりでも岩屋や岩陰などが信仰の対象になっている所がある。これからすると、「ウト洞」は集落の人たちがこの洞に何らかの意味で印象に残る洞穴があると言い伝えていることになる。
「ウトフ」に戻ってみると、確か「ウド(独活)」の茎も中空だと思いついた。「ウド」の語源がここにあるとは断言できないし、「フ」が「生」であるとは言い切れないけれども、何だか傍証されたように感じている。 髭じいさん
