忠臣蔵

かつては毎年この頃になると忠臣蔵がテレビに登場し、涙を流すのが恒例であった。なのに、なぜかここ数年は放送されることが少なかったように思う。
ところが、今年は連続ドラマで二本見ることができる。おかげでテレビを見る機会が増えることになった。
私は、赤穂に近いところで生まれ育った。少年期から、それこそずっと赤穂浪士の話を見聞きしてきたのである。ドラマも数え切れないほど見てきたが、私の奥底には何か割り切れない思いがあった。たしかに大石蔵之助以下四十七士が主君の仇討ちをするのは、胸のすく快挙であっただろう。だが、赤穂浪士が善、吉良上野介が悪と決め付けるのに不安があったのも一因だと思う。吉良上野介が地元では名君であったと聞くにつれ、相変わらず涙は流れるものの、いっそう落ち着かない気分になっていた。
家族で赤穂へ行く機会があった。赤穂城へ行き塩饅頭も食べたし、資料館のような所へも行った。中でも、大石神社に参拝したのが印象に残っている。
もうはっきりしないが、恐らくこの辺りから、吉良さんの墓参りを念願するようになったと思う。
七八年前のこと、頼母子講の旅行で常滑に行く機会があり、仲間に頼んで、途中吉良さんの墓参りに寄ってもらった。大石神社ほど仰々しくはないが、綺麗に掃き清められた墓で、線香から煙が出ていた。私は手を合わせただけであるが、長年のつかえが下りたことを覚えている。
これ以後は安気にドラマを見ることができ、脚本の視点や役者の力量などを落ち着いて楽しめるようになったと思う。

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