カレーライス

カレーを語るとなると、一回のコラムに収まりきらないほどの思いがある。だから、ここではスケッチ風に描いてみるだけだ。
少年期には、今考えるとたいした物ではないのに、カレーは大層なご馳走であった。何かの記念日に食べたような記憶がある。白飯自体が満足に食えたわけではないから、母子家庭で育った私にしてみれば、腹いっぱい食えて大満足であった。
青年期には、辛口または中辛辺りの刺激が強いものを好んで食べた。大人になったことを自分に言い聞かせる意味合いがあった。
娘達が成長してカレーを食べる年齢になると、矛盾が起きた。まさか子供に辛口を食べさせるわけにはいかない。しかし、私はしばらく中辛あたりで頑張った。
私が中辛以上を主張すると、家内は毎回二種類作らざるをえなくなる。さぞかし大変だっただろう。私も娘達も妥協せざるを得なかった。
私は中辛よりやや甘めに、娘達は甘口からやや中辛に近い方へ、互いに歩み寄ったと思う。成長期にある彼女達は肉のたっぷり入ったものを必要としていたし、そろそろ私は野菜中心のカレーを食べたくなっていた。この点でも妥協する他ない。こうして段々と我が家のカレーが出来上がってきたのである。
娘が自立し始めると、私と妻の二人だけであるから、自分達の好みを優先できるようになった。しかし、家内は一度にたくさん作る癖をなかなか直せず、美味いには美味いが、カレーを何日も食べる羽目になる。
できれば、あっさりしたカレーを少しだけ作ってくれるとありがたいなあ。

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