来客

※これはほぼ一年前に没になったものであるが、何故か復活したのである。タイムスリップを楽しんでもらいたい。

今朝、突然来客があった。彼とは長年の付き合いで、いつも良くして貰っている。今日は飛騨地方に雪が降り、山仕事ができないというわけで、出かけてくれたらしい。
私はいつも寝坊であるが、夜中に飲んだカゼ薬の加減か、今朝はいつもより更に長く寝ていた。妻は、洗濯中で、玄関の声が聞こえなかったようだ。何回か声をかけてくれたのであろう。運良く目がさめた私は、慌てて彼を迎えたのである。
実を言うと、彼と私は昨日福井へ日帰り旅行に出かけていた。カニを食うためでもないし、温泉につかるためでもない。私は「ヤマタノオロチ」を探しに、彼はもっと高尚な目的で九頭龍川を下ったのである。従って、土産はない。
例によって、珍道中であった。時ならぬ台風の余波で山中は大荒れの天候になり、運転が大変であっただろうに、彼は一言もそれには触れない。私は、生来のボンヤリであるから、脳天気に景色を楽しんでいた。目的地は越知山の越知神社であったが、越廼村の海岸にある末社を訪れたに過ぎない。しかし、それなりに実りある旅であったと思う。
たまたま飛騨に雪が降ったおかげで、旅行の翌日に、二人でゆっくり情報を交換できたというわけだ。とは言え、彼は勉強家であるから、寝ぼけた私ではとても歯が立たない。コーヒーなどで時間稼ぎをしながら、親切な駐在さんがコピーしてくれた資料や幾つか地図を眺めて、ひと時を楽しんだのである。
彼には、ずいぶん宿題も課せられた。来年、雪の解ける頃を目途に、再度福井へ出かけることに合意したのが、まあ一番の収穫かも知れない。

※なぜこの原稿が復活したのか推理するのも面白かろう。

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