スピードと思考回路

あらかじめ述べておくことがある。これはあくまで私の場合であって、一般化しようなどと考えているわけではない。
ここで言うスピードは、歩いたり、走ったり、乗り物に乗る時など移動のそれである。
私の能力からすると移動のスピードが早くなればなるほど、考えがショートカットして、単純化する。
ゆっくり歩く散歩だと、気に入った景色があれば立ち止まり、先に見たいものがあれば少しスピードが上がる。何か思いついたことが出てくれば、どこかに腰をおろしてあれこれ考えることもできる。
これが自転車となると、ゆっくり走るのと急ぐ場合で異なるが、見たり気になることが線や点になってしまう。後者であれば目立つ店とか、川の様子とか、すれ違う車とかである。
車に乗るとなると、点が更にまばらになり、目的地などに焦点が定まってしまうことが多い。同席する人との会話が面白ければそちらのほうへ興味が行くが、どこか魂が定まらない感じがする。
鉄道の場合は、道路と並行して走る時など車と抜いたり抜かれたりするのをぼんやり楽しむことがあるものの、景色に生活の匂いが感じられなくなり、特別なものを見るほかは見ても目に入らない状態になる。
新幹線や飛行機となると、海とか富士山とかまさにそれとして見たいもの以外は見なくなる。移動という行為のみであって、道連れや出会う人がいるとしても、移動に伴う異質な世界との出会いというようなものは期待できない。
私はのろまである。腰をおろして、やや古びた思考回路をフルに回転させる方が性にあっている。

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