雨季と梅雨

今年は黄砂が特にひどかったように思う。八幡町の街中でも細かな砂が降って、しきりにくしゃみが出た。この「砂」が中央アジアのゴビ砂漠や黄土高原から舞い上がり、気流に乗って、大陸のみならず日本まで飛散しているという。
この黄砂だけでなく日本の梅雨も、思いのほか、アジア全体に関わるようだ。
私がインドで暮したことがある点は既に書いたので、記憶されている方もおられるでしょう。六月ごろになると、アラビア海から東ないし東北方へ湿った風の吹く日が多くなる。海から海岸へ吹く風が目の前で突然雲になっていくのを飽きずに眺めていたことを思い出す。湿度が高ければ海岸付近で雨雲になることがあり、乾いた大地にポツリポツリと雨が降り出すことになる。まあ大抵はこの雲がデカンの山などにぶつかり冷やされてかなりの雨を降らすことになる。この雨でやっとできる田植えの話も面白いが端折ることにして、この雨雲がヒマラヤ山系の東にあたるアッサム地方では信じられないほどの雨を降らす。だがアッサムの雨は、私の皮膚感覚では、ベンガル湾からの風も影響するように思う。
この湿った風が更に中国の雲南地方などで大量の雨を降らし、揚子江やメコン川など大河の水源になると言う。
更にこの風が東に流れると、東シナ海で水分を補給し、北進する太平洋高気団に押し上げられ列島上空で継続して雨雲を供給し、前線として停滞する。これが日本の梅雨というわけだ。
つまり日本の天候は日本付近のみならず、アジア全体の天候に影響されており、日頃何気なく話す天気が壮大なスケールを持っているという話。