空き家税

断腸の思いでこの町を離れ、空き家を残す人もいるだろう。せめて空き家に仏壇を残して行く人も多い。彼岸や盆に帰って来て、墓と家の掃除をするのを習慣にしている人もいるに違いない。
これらを考慮に入れても、空き家が町の活力を奪っている点を書かざるを得ない。
冬には雪が降る。家の前の道路は近所総出で雪をどけなければならない。空き家の前だからと言ってそのままにしておくことはできないのである。一回や二回除雪するぐらいでは誰も文句を言わないが、一冬中になるとしんどい話である。これが何年も空き家になっている所では、各家庭の負担は重い。屋根にある雪が道路に落ちて怪我人が出ないかも気になるところである。
空き家は衛生上もよくない。梅雨から夏にかけては、毎日風を通しても湿気でカビが出る。まして空き家においてはこれらを避けられまい。鼠や猫などの逃げ場になって、衛生状態が一向に改善しない意味もある。羽アリの温床となって、初夏には気持ち悪いほど飛び回っているのも珍しくない。
また、田舎だから左程では無いとしても、空き家が犯罪の温床にもなりかねない点を考慮する必要がある。
私有財産であるからといって、これらの負担をすべて町の衆におっかぶせて、自分は知らん振りを決め込む訳にもいくまい。
子供を持つ若者が町の一軒家を探しているのに、トラブルを恐れて貸そうとしない人が多いのである。
憎まれることを覚悟して、私は、例えば旧八幡市街などの空き家に「空き家税」を課すことを提案したい。無論、人に貸して活用すればこの限りではないし、仏壇を預かる場所を確保するなども考えねばなるまい。固定資産税との関連もありそうだが、これとは別に市税として徴収するのはどうだろう。空き家の定義は難しいとしても、議会等で充分話し合って、無理のないようやってもらいたい。

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