馬場(ばんば)と万場(まんば)

題名をみて、郡上の人なら大和の万場を思い浮かべられるかもしれないが、何のことか想像できる人は殆どいるまい。
私は、今年の前半、介護保険に入らなければならないという通知を受け取った。高齢者の仲間入りし保険料を納入する身となったのである。長いこと生きても、分からないことばかり。だからこそこの世は面白いということにしておく。
白山信仰の三馬場(ばんば)なら聞いたことがあるかもしれない。九世紀初め頃に開かれたという記録がある。
馬場は、白山へ登るのに馬で行き、そこでつなぎ止めておいた場所である。それ以上は神域なので馬では入れなかったというような説がある。
越前馬場については、平泉寺の近くに馬場がある。ところが美濃の長滝白山神社の近くにあるのかどうか、小字すら残っておらず、確認が難しい。それでも長滝神社そのものが馬場だった可能性もあるし、石徹白に「番場(ばんば)」という字があるので、じっくり取り組まねばなるまい。
さて、万場(まんば)は大和の北にあり、話の中では何度も聞いたことがある。だが、知り合いもいないし土地勘もない。那比の万場なら、なじみがある。私は那比万場について由來を聴いたことがあり、その時は「崖(がけ)地」と解釈されることが多いという内容だっと思う。腑に落ちなかったものの、そうゆうものかと拝聴していた。
その後、万場を通るたびに、やはり腑に落ちない。確かに那比川左岸のナベバイには大きな岩が迫っており分からないこともない。が、万場は右岸である。何軒か集落があり、それなりに田畑もある。
那比もまた大和を中心とする山田庄に入っていた時期があり、大和の万場と関連があるかもしれないという思いはあった。
近ごろ、西和良の美山や和良の三庫にも万場という字があることが確認できた。美山万場は堀越から出る口にあり、崖地とは思えない。三庫も同じである。未確認ながら、明宝の寒水にもあるように聞いている。
これらからすると万場は他にも用例があるので、一般名詞の意味あいがある。地形は、崖地というよりは、なだらかな広がりのある印象だ。
してみると馬場と万場は、どちらも馬に関連するのではないか。「馬」は呉音が「マ」、漢音が「バ」であるから、それほど頑張らなくとも馬へたどり着く。
ただ前者が白山信仰に関連するのに対し、後者が青草を食べさせるための放牧地とすれば、使い分けされていたことになる。さらに両者には地域差ないし時間差があったのではないか。
今のところ、万場という地名が東氏の勢力下にあったことに関連すると推測している。

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