つっかけ

この場合は草履のことで、すべての世代に分かってもらえるかどうか分からない用語である。思い起こせば、学生時代からつっかけを履いてきた。サラリーマンをやっていた時にはやむを得ず靴を履くことが多かったが、それ以外では殆んどつっかけ草履をはいていた。
郡上へ越してからも、冠婚葬祭など特別な時をのぞけば、殆んどつっかけである。長距離の散歩でも、友人宅を尋ねるときでも変わらない。
とは言え、年がら年中同じものを履いているわけではない。夏はつま先の出た軽そうなものを履く。そのまま川に入ったりするので、ゴム草履を履くことが多い。ここしばらく、ちょっとした突起があって足のツボにあたるものが好みである。
冬はつま先を覆った保温のきくものを履く。私は相当な大雪でも、自転車通勤なので、つっかけで十分である。下が凍ってひどく凸凹になったりテカテカになるときは、さすがに長靴を履いていくことがある。
何回か上京した時も、記憶に残っている限りでは、やはりつっかけで出かけたように思う。最後に上京してからもう五年ほど経つだろうか、その時も草履だった。たいてい神田の古本屋を回るのが楽しみなのだが、あちこち行くと結構広い。草履では大変だなあと感じていても、出かけるときに靴が思い浮かばない。
一緒に回ってくれる友人に、とうとう「草履ではあまり回れないから、靴にしろ」てなことを言われてしまった。かくの如く、つっかけで暮らすことが当たり前で、その他が思い浮かばない状況である。
先週末だったか、那比の喫茶店へ行くのにバイクに乗っていると、寺坂のトンネルを抜けたところでパトカーに出会った。田舎道で会うのが以外な気がしたものの、そのまま雛成(ひななり)を走っていた。しばらくすると、パトカーが追いかけてきて止まれと言う。腑に落ちなかったけれども、仕方なく止めた。しげしげバイク周りを見た上で、免許書を出せという。結局のところ、私がつっかけでバイクに乗っていたのが違反であるという。
私が実際に乗っていたのは両足を載せられるスクーターだったので、どう安全にかかわるのか尋ねてみると、年配の警官が「規則」だからという。「規則を知らないとしても、違反に変わりはない」ということで違反切符を切られ、「罰金を支払え」という。
私は彼らが依拠している規則があることを知らなかったし、どういう経緯で生まれたのかも知らない。私にしても下駄を履いてギアチェンジするタイプのバイクに乗ることはない。警官の言うように、知らないことが言い訳にならないことは分かる。週明けに、規則が出来た経緯とその運用について警察に問い合わせた上で、罰金を支払うことになりそうだ。小市民の事とて、この辺りが限界かな。