息子と暮らす

 妻が家を出ていきました。度重なる僕の不始末にあいそをつかして。嘘です。彼女は自主的なホリディをとってフランスはパリィに出掛けて行ったのでした。あのすかした街のどこがいいんだかわかりませんが。妻はすっかりパリのトリコです。五歳の息子に「おまえも行って来るか?」と聞くと、「僕はパリには行きたくない。」と言いました。よーし、じゃあ父さんと沖縄にでも行くか?と聞くと、それにもあまり乗り気ではありません。なんだか天気も悪いし、淡々といつも通りの日常生活を送る父と子であります。オトコは黙って世田谷区、なのでありました。
 僕は日本一「家にいるお父さん」なので家事も普通のことはこなします。洗濯も掃除も苦になりません。ただ料理だけがすごく才能が無くって、とても苦労します。なんというのか二つのことが同時に出来ない、というのが致命的な感じがします。昨日もパスタを茹でながらほうれん草のソテーなんぞを作っていたら、茹ですぎてしまったパスタにかまけているうちにほうれん草は焦がしてしまい、いかにも切ない料理が出来上がりました。それでも美味しいと言ってくれる子供にますます切なくなりました。
 今日の朝は冷凍の焼きおにぎりに目玉焼きという手抜きメニューでした。せめて昨日のほうれん草の失敗を取り返そうと、エノキと一緒にみそ汁を作りました。いい感じで完成に近づいたところで味噌が切れていることに気付きました。うーん、しばし悩んで麺つゆで味付けしてみました。ふしぎなスープが出来上がりました。それでも「まあまあだね」などと言いながら息子は食べてはくれてはいたのですが、保育園前のばたばたした朝の時間にのんびり食べている息子にいらいらして、つい「早く食べなさい!」などと声を荒げてしまいました。べそをかきながら食べ終えた彼を保育園に送ってから、反省しました。 母親がいないのに元気に明るく振る舞っている彼の中に寂しさが無いはずがありません。それを表に出さずにがんばっている息子に対して一時の感情をぶちまけてしまったことを、とても恥ずかしく思いました。何をやっておるのだ俺は、と情けなくなりました。
 今日は早めにお迎えにいって、ちょっとはましなゴハンを作るからまたよろしく、のお父さんでありました。