冷たい麦茶

私の場合、冬のごちそうは何といっても鍋料理にいきつく。それでは夏場はどうだろう。夏は肉や魚はもちろん野菜や果物などの素材が豊富で、食べ方も熱いものから冷たいものまでバリエーションが多い。
ところが、毎年、梅雨を過ぎたあたりでどうしても食欲が落ちてくる。何を食べても味気ないような気がする。本当のところは何故なのか分からないが、割合うまく過ごせた夏と比べ、はたと気がついたことがある。
素麺や冷麦など冷たいものでも、よく噛んで食べれば、内臓にやさしく体調を保ちやすい。だが冷たいまま喉を通すのが心地よいので、よく噛みもせず飲み込んでしまう。そうなると、唾液が出ることも少なく、冷たいまま胃へ流し込むことになる。
若い時には、味噌汁などを飯にかけて食べることを嫌っていたように記憶している。だが近ごろ、特に夏場になると、飯の粘りが頭に浮かんで噛む気にならず、お茶や味噌汁をかけて食うようになった。或いは飲み込む力が落ちてきたからかも知れない。
私は、大根おろしが好きである。ちりめんじゃこをのせて醤油をかける。夏大根は辛いものが多くて、これがなかなかうまい。これにしても辛い汁ごと飯にかけて、づるづる食べてしまう。
近ごろビールを飲まなくなったので、冷たいものと言えば、お茶をがぶ飲みするのを嚆矢とする。郡上は山の中だから朝のうちはさほどでないとしても、昼からは大都市と同じように暑苦しい。汗として出る分以上を飲んでいるに違いない。
私は、ほぼ毎日散歩をするし、仕事場の掃除もする。道に水を撒いたり、いくらかでも屋根に放水したりする。通勤は自転車であるし、ことほど左様に運動しないわけではないが、若い時ほど汗をかいていないようである。何事も一生懸命には行動しないからだろう。
仕事の後はとくに、いくらかでも汗をかくと、冷たい飲み物がほしくなる。近ごろは熱中症対策とやらで、水分をこまめに取るよう言われることも関連するかもしれない。年相応に量を制限すればよいものを、なかなか止められず、どうしても飲みすぎてしまう。
ここまでくると原因が分かってくる。口当たりやのど越しを優先して、冷たい食べ物や飲み物を摂り過ぎる。しかも飲み込むように食べて、唾液が出る間もなく、胃へ流し込んでしまう。かようにして、だんだん食欲が落ちてくるのだ。更に食欲が落ちてくると、流し込んででも食わねば体がもたないような錯覚がある。
例え少ない量でも、よく噛んでゆっくり食べれば、食物が温まる上に唾液と共に飲み込むと消化に良い。要は、この当たり前の営みを取り戻す気になりますかどうか。
それにしても、汗をかいた後の麦茶はうまいなあ。