味噌カツ -名古屋編-

名古屋へ行く機会も少ないし、さほど味噌カツを食べてきたわけでもない。また薀蓄があるわけでも、鋭敏な味覚を持っているわけでもないから、何も私が書くまでもないが、いくつか気になる点がある。
十二月初旬に仲間と一緒に旅行で名古屋へ行くことがあった。まことに暢気なもので、目的の一つは名物とされる味噌カツを食べることであったが、私は真面目であって、予め検索していたある老舗の「わらじカツ」を食べようと決意していた。
サイズが大きいから「わらじ」と名づけたのは間違いあるまい。一目大きいから、どうせ厚さはそれ程でもなかろうとタカをくくっていた。だが実際注文してみると、その厚さが標準だったので、私一人で食べきれる自信がなくなり、それだけで少し後悔した。幸い、名古屋にいる娘と孫が同伴してくれていたので、彼らに手伝ってもらい事なきを得たのである。
さて、その「わらじカツ」には初めから味噌ダレがタップリかかっていた。タレに相当の自信があるのだろう。表裏共にかかっていたから、カツを切る前にタレに浸けていたのかもしれない。
一口食べてタレがさほど甘くなく、割合あっさりしていたので、結構食べることができた。さすがに終盤になると腹に応えてきたが、なんとか完食でき、奇妙な達成感があったように思う。そう言えば、ここだけでなく何回か別の店で食べたものも、それほど甘くはなかった。
名古屋の味噌カツは、串カツをタップリ味噌ダレにつけて食べる土手煮がもとらしい。私は食べながら、何とはなしに、味噌煮込みうどんを思い浮かべていた。八丁味噌は豆製で、煮込んでも風味があまり落ちず、様々な出汁を含んで重厚な味になる。その個性に慣れてしまえば、不思議な魅力がある。味噌カツは煮込みうどんの伝統に繋がっていそうだし、又さらに味噌味で雑煮にしたこと辺りまでは遡れそうだが、これ以上詳しく調べて文化論にまで抽象するつもりはない。